骨と筋肉をつないでいる組織を「腱」といい、腱が通るトンネルである「腱鞘」が何らかの原因で炎症を起こして分厚く狭くなり、腱がスムーズに腱鞘を通過できなくなった状態が腱鞘炎です。
親指を伸ばす伸筋群が狭窄されて起こる「ドケルバン病」や指を曲げる屈筋群に炎症がでる「ばね指」などの患者が多いいです。
<原因>
一番の原因は親指の使いすぎです。親指に負荷をかけすぎる事で、親指を伸ばすための腱である「短母指伸筋」や広げるための腱「長母指外転筋」が傷つき腫れてしまいます。それと同時に、この2つの腱を覆う腱鞘も厚くなってしまい、腱の通り道が狭くなってしまいます。さらには、腱が腱鞘を通過するときの滑りも悪くなってしまう為、親指・手首を使うとより一層炎症が拡がてしまい、腫れや痛みといった症状が酷くなるという悪循環に陥ってしまいます。
また、近年よくスマートフォンが普及したことによって「ドケルバン病」と診断された患者さんが増えたため、「スマホ腱鞘炎」という別名もつけられています。
女性ホルモンの変動(プロゲステロンの増加・エストロゲンの減少)も1つの原因となります。
実はドケルバン病は女性に多いのです。その理由に「女性ホルモン」が関係しています。ドケルバン病になりやすい時期の一つである妊娠・出産時期には「プロゲステロン」という妊娠維持に必要なホルモンが通常期よりも多く分泌されています。このプロゲステロンには、腱を覆う”腱鞘を収縮させる”という作用を持っていることから、腱の滑りを悪くする原因の一つとして考えられています。
一方で更年期の時期には、卵胞ホルモンと呼ばれる「エストロゲン」が閉経に伴い減少していきます。エストロゲンは女性らしい体つきを作る・髪や肌の潤いを保つ働きだけでなく、腱や関節を柔軟に保つという作用を持っている為、減少することで腱や腱鞘が炎症を起こす原因となっております。
<発症しやすい人>
●妊娠・出産期:20~30代
→授乳や沐浴で赤ちゃんの頭を支える時など親指を広く開く動作を頻繫にすることで親指に負担がかかることが原因です。妊娠・出産によるホルモンの影響もあります。
●更年期:50~60代
→閉経に伴うホルモンバランスの変化や家事による手の酷使が原因です。
※ドケルバン病は、手の細かい動きを必要とする・長時間にわたって手首を酷使するような職業の人たちが罹りやすく、「職業病」ともよばれています。
料理人・美容師・ピアニスト・テニスプレーヤー・ゴルファー・パソコン作業をよくする人・スマホを片手で操作する人。のような人は特に指を酷使することがあるので発症しやすい業種と言われております。